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生産スケジューラFLEXSCHEによる
生産リードタイム短縮と製品在庫量のコントロール

株式会社フレクシェ 浦野幹夫
『IEレビュー』 2012年10月号 掲載記事

1.FLEXSCHE(フレクシェ)

近年の製造業をとりまく環境の大きな変化、例えば、多品種少量生産への移行、迅速な納期回答の要求、頻繁に変わる生産計画などにより、以前と比べてはるかに緻密な工場運営が強いられるようになった。これを実現するために不可欠な仕組みとしての生産スケジューラの重要性が広く認知され、求められつつある。

本稿で取り上げる生産スケジューラFLEXSCHE(フレクシェ)は、多種多様な製造業の要求に応えるための「柔軟性」と使い続けるための「使いやすさ」を重視して開発されたパッケージソフトウェアである【図表1】。

図表1 生産スケジューラFLEXSCHE(フレクシェ)

2.生産リードタイムの短縮

無駄な納期遅れの回避、滞留在庫・製品在庫の削減に伴うキャッシュフロー改善など、生産リードタイム短縮には多大な効用があることは言うまでもないが、多くの製造業ではなかなか実現できずに苦労している。

旧来のMRPの発想では、確率的に見越された大まかな工程通過時間を表す「固定リードタイム」を積み上げたものが生産リードタイムである【図表2】。固定リードタイムは1日または数日であり、実際には不必要な待ち時間までもが無駄に織り込まれてしまう。いわば「どんぶり勘定」だ。

一方生産スケジューリングの場合、個々の作業を何時から何時までどの設備で行うのかを秒単位の時間軸上でシミュレーションする。工程は「1個を加工するのに2分かかるから10個を加工するには20分かかる」といった具合に「正味作業時間」に基づいて緻密にモデル化され、段取り時間や工程間の搬送時間なども正味時間で計算される。不合理な無駄は排除される。

固定リードタイムを積み上げて立案する限り、乾いた雑巾をいくら絞っても生産リードタイムはさほど短くはならない。そのような工場にとって、生産スケジューリングが生産リードタイム短縮の特効薬であろう。

また、工場によってはボトルネック工程を中心としたスケジューリングも効果的だ。FLEXSCHEでは、総段取り時間を減らすためにボトルネック工程の作業実行順序をコントロールして、前後工程をそれに従属させて実行する計画を立てる、といった立案手順も自在に定義できる。各ロットのリードタイムが短くなるだけでなく、工場全体のスループットも向上するだろう。

図表2 MRPと生産スケジューリングの違い

3.計画立案作業の軽減

ここでいう「立案作業の軽減」は、単に計画担当者の仕事を楽にすることを指すのではない。作業時間の削減により、計画立案・変更に伴う各部署との折衝などといった本来的な業務に時間を割けるということだ。いまだに手書き(Excel上の試行錯誤も含む)で計画を作成・更新し、特急オーダー受け入れのために「線を引き直す」といった非生産的作業に多くの時間を費やす立案担当者は少なくない。

FLEXSCHEならば「リスケジュール」ボタンを押すだけで瞬く間に膨大な制約条件を考慮に入れた計画が立案され、必要に応じて手早く調整した上で、作業指示を発行することができる。製造現場からの作業実績データも取り込めば次の計画に反映される。

4.見込み生産における生産スケジューリング

出荷の数量と時期の確定後に生産着手する受注生産においては、主に製造現場における製造リードタイムを意識することで納期遅れや機会損失を回避できる。だがそれ以外の業種ではそれぞれの事情により、生産スケジューラの導入がためらわれる場合がある。

食品メーカーや日用品メーカーのように常に需要予測をしながら生産をする業種、あるいは自動車部品メーカーや電子部品メーカーのように内示情報に基づいて先行生産せざるを得ないような業種。これらの製造業においては、出荷の数量とタイミングがまだ確定していない状態で生産に着手するため、蓋を開けてみると出荷量は見込みより少なかったり多かったりする。少ない場合は余剰を製品在庫として積み上げ、多い場合は製品在庫を取り崩して対応する。在庫リスク(消費期限切れや死蔵在庫、キャッシュフローの悪化)を抑えつつ納期遅れや機会損失を回避するためには、製造リードタイム短縮だけでは不十分であり、むしろ製品在庫量の巧みなコントロール(アクセル&ブレーキ)が強く求められる。

見込み生産における製品在庫量のコントロールの重要性は認められながらも、最良のアプローチを見出すことは難しかった。従来多くの製造業において、製品毎の月次見込み需要量を按分して得た日次生産量をMPS(Master Production Schedule:基準生産計画)として達成すべき生産量とみなし、セールス部門もその数量をあてにして動く。現実が見込みからずれてくると、セールス部門と製造部門が合同で「製販調整会議」を開いてMPSを再調整する。しかしこの方法では速やかで合理的な対応はできず、製造現場は「需要の不確定性と確率的変動」に振り回されてしまい、結局は

といった問題の頻発を回避できない。また製造現場の限られたリソースを多品種に割り当てるために品種間の干渉が常時発生するが、その状況を把握することは難しく、ある製品の欠品を回避したら、工場の生産能力に余力がないために別の製品がいつの間にか欠品していた、ということも起こりうる。

そこで威力を発揮するのが生産スケジューラである。

生産スケジューラは工場のリアルな生産能力に基づいて未来の在庫量推移をもシミュレートするので、たとえ工程が複雑で多品種を生産する工場でも、需給バランスの推移を高い精度で瞬時に予測できる。情報の流れを「MPS ⇒ 製造現場」という一方通行から「生産計画 ⇔ 生産スケジューラ」という双方向に切替えて初めて「需要の不確定性と確率的変動」に正面から対処できるようになる。

そしてそれを実現したのが、2012年にリリースされたFLEXSCHE d-MPS(フレクシェ・ディー・エムピーエス)である。時間軸上の需給バランスの推移を視覚的・俯瞰的に監視し、直感的に調整するためのユーザーインターフェースを備える【図表3】。生産スケジューリングによって裏付けられた各品目の供給量の過不足状況が色分けして警告表示され、需要の確率的な変動幅(信頼水準)をガイドラインとして要求量や安全在庫量を調整できる。問題の発生が予見され次第、速やかに対処することができる。

図表3 FLEXSCHE d-MPS