ユーザー導入事例

2つの地区の生産と輸送に立て続けに採用
完全自社開発の代わりにオープンなFLEXSCHEを活用

新日本製鐵株式会社様 鉄鋼

歴史の教科書に必ず出てくる新日本製鐵株式会社八幡製鐵所。最初に高炉に火が灯ったのは明治34年(1901年)。それから100余年の歳月を経て、新日本製鐵株式会社は国内で業界トップだけでなく、世界でも粗鋼生産量でトップ3に入ります。

こうした成長の陰には、毎年のように繰り返される生産革新が大きな役割を果たしていますが、その一環として同社が導入しているのがFLEXSCHEです。昨年から八幡製鐵所内の戸畑地区での輸送スケジュールにFLEXSCHEの導入を進め稼動間近まで迫っています。しかし実は、同社ではそれより遡ること1年前に同製鐵所内の八幡地区の生産ラインにもFLEXSCHEを導入していました。

なぜ短期間の間に相次いでFLEXSCHEを導入することになったのでしょうか。 今回は株式会社フレクシェ代表の浦野幹夫も取材に同行し、FLEXSCHE導入に携わった4名の方にお話をお伺いしました。

輸送計画にスケジューラ導入を検討

古賀 照光 氏

新日本製鐵株式会社 八幡製鐵所
生産業務部 物流企画グループ
マネジャー 古賀 照光 氏

新北九州空港からバスで西に向かって進むと、やがて広大な敷地の中の工場群と、その奥の大きな高炉が見えてきます。それが新日本製鐵株式会社八幡製鐵所です。

新日本製鐵八幡製鐵所はもともと官営によってスタートしますがその後民営化され、現在は八幡だけでなく、室蘭、君津、名古屋、大分などにも生産拠点として製鐵所を構えています。その中で100年あまりともっとも長い歴史を誇っているのが八幡製鐵所です。

八幡製鐵所の広大な敷地は八幡地区と戸畑地区に分かれており、それらをつなぐ約6kmの運搬用専用鉄道「くろがね線」が走っています。八幡地区では電磁鋼板・土木用鋼矢板・レールを、戸畑地区では自動車用鋼板・飲料缶などの容器用鋼板・ステンレス鋼板・スパイラル鋼管を製造しています。今回、FLEXSCHEの導入がすすめられているのは戸畑地区内の輸送計画システムです。

「戸畑地区は原料である鉄鉱石や石炭が港から入ると、コークス工場などを経て高炉に送られます。その後いくつかの工程を経てブリキならブリキの工場、ステンレス鋼板はステンレス鋼板をつくる工場へと振り分けられ、最終的に製品倉庫で保管することになります。今回FLEXSCHEの適用対象は完成品を製品倉庫から船やトラックに積むまでの輸送部分です。」一般に、輸送の日程計画に生産スケジューラが採用されることはあまりないことです。しかし、今回のシステムではその問題の複雑さ故、必要とされていたのはまさに生産スケジューラだったのです。

効率性の決め手は3つのスケジュールの連携

工藤 秀晃 氏

新日鉄ソリューションズ株式会社
鉄鋼ソリューション事業部
北九州システムセンター
スティール3グループ
シニア・マネージャー
工藤 秀晃 氏

「日程計画のためのミーティングは毎シフトのことでした。次シフトの輸送の計画をどうしようか、と」製品が完成すると梱包されて製品倉庫に運ばれますが、製品倉庫だけでも20か所あります。そのうえ、運ばれる先も「輸出船用の岸壁」「国内船用の岸壁」のほか、製品倉庫から直接トラックで陸送することもあり、「横もち」と呼ばれる倉庫間の移動もあります。各所に配置されたクレーンや数が限られたパレットの利用に伴う制約など、スケジュールを作成するまでの問題を複雑にしている要因は山のように存在します。

「それまでの日程計画は人が作成している状態で、日程計画も『製品倉庫の計画』『キャリアの計画』『岸壁で積む計画』の3つをそれぞれの担当者が毎日考えていました。その他にもう1人、全体の日程計画を見る担当者がおり、当製鐵所は24時間体制で3交替ですから、計12人が計画を立てていたことになります。そのため計画作成に費やすコストは膨大なものでした」

輸送スケジューリングで大きな課題だったのが、これら3つの日程計画の連携により整合性のとれたスケジュールを策定する事です。効率よいスケジュールを策定するためには、船が到着する時刻に合わせて製品を製品倉庫より積み払い出すことが必要であり、「製品倉庫」「キャリア」「岸壁」の3つの計画がスムーズに連携しなければ総合的に高精度のスケジュールが実現できないのです。

「毎シフト4人の担当者が話し合うことでスムーズな連携を目指していましたが、実際には作業変動もあり大変でした。精度の高い計画策定に多大な時間と労力を費やしていたのが事実です。こうした非効率をいかに少なくできるかが大きな課題だったのです。」さらにもう一点、将来的な展望に立った場合も人の手による日程計画に限界を感じ始めていたという事情があります。

「各計画担当者の蓄積されたノウハウがあってこそ、完璧とまでいかなくともなんとか日々のスケジューリングをこなせていたわけですが、いつかは彼らもいなくなってしまいます。その前にそうしたノウハウを次の世代、またその次の世代に確実に伝えていかなければなりません。これを延々と繰り返していくのは無理があるので、やはり早い段階でノウハウを客観化すべきであろうと判断したわけです」

図1

こうしてスケジューリングシステム構築を決意することになるのです。この戸畑地区の輸送計画システムの構築を担当する新日鉄ソリューションズの当初の思惑では、パッケージソフトを使わずに完全に独自のシステムを開発する予定でした。ところがその頃、おなじ八幡製鐵所のもうひとつの地区、八幡地区の生産ラインで従来のシステムを置き換える形ですでに導入が進められていた生産スケジューラFLEXSCHEを見せてもらう機会があり、方針が変わることになります。

採用の決め手はFLEXSCHEのオープンな姿勢とGUI

宮本 聡明 氏

新日鉄ソリューションズ株式会社
鉄鋼ソリューション事業部
北九州システムセンター
スティール3グループ
宮本 聡明 氏

実は八幡地区でも、「それまでほとんどのシステムを自前で構築してきた」というほど高い技術力があり、従来の生産スケジューリングシステムは自前で開発してきたのです。しかし、使い勝手の良いスケジューラを完全に自前で開発することは非効率であり、時間をかけて十分検討した結果、パッケージソフトをベースに開発することを選択したのでした。スケジューリングシステムを開発してきた豊富な経験に基づいて慎重に選定した結果、FLEXSCHEを選択しました。

戸畑地区の輸送スケジューリングシステムが置かれている状況は八幡地区と同様であったため、パッケージソフトの利用は十分現実的な選択肢とみなされるようになります。もちろん、その時点ではFLEXSCHEはあくまで候補の1つに過ぎませんでした。他社のスケジューラもしらみつぶしに調べ、資料を取り寄せて問い合わせをしていきました。さらに検討を重ね、八幡地区と同じく最終的にFLEXSCHEを選んだのには2つの大きな理由があったからでした。いずれも基本的には八幡地区と共通しています。

「ユーザーインターフェースを自前で作りこんでいくのはとても手間のかかる作業なのです。それだけで何ヶ月もの時間がかかってしまい、仮にできたとしても十分な操作性を実現するのは至難の業です。そんな中、FLEXSCHEには非常に優れたGUIがすでに用意されており、なおかつ我々が拡張することもできる。これだけでも相当な手間と時間の節約になり、ニーズにもマッチしている。これは選ぶ際に非常に大きなポイントとなりました」

もうひとつはFLEXSCHEが柔軟なパッケージソフトであることでした。「ゼロから手作りでつくる場合、自由が効きすぎるため各自の勝手な意見が噴出し、なかなか前に進みません。ところがパッケージソフトを使うとなれば、すでに動くものが目の前にあるわけで、その中でできることをやろうとするから地に足の着いた議論をすることができるのです。既存の機能に程好く制限されるから、それをうまく使おうとして統一感のあるアイディアも出てくる。では、なぜ数多くのパッケージソフトの中でFLEXSCHEを選んだかというと、ソフトの中身がオープンだからです。他社のスケジューラはブラックボックス化して見せてくれない。ところがフレクシェ社はモデルやロジックをオープンにしてくれており、プログラミングもできる。当社が望むとおりのスケジューラを実現できそうかどうかの判断が可能だったのです」

こうして、八幡地区の製造スケジューリングシステムに続いて、戸畑地区の輸送計画システムにもFLEXSCHEが導入されることになったのです。

高い技術を活かして自社で続々機能を追加

もちろんFLEXSCHEを使うのは初めてであるため、実のところ自力でできる範囲を見定めることが難しく、当初はフレクシェ社に開発の一部を依頼する可能性も視野に入れており、実際フレクシェのエンジニアと具体的な仕様について相談する機会を設けたりもしました。

しかしその後FLEXSCHEに詳しくなっていくにつれて、新日鉄ソリューションズの高い技術力や経験を存分に反映させることで望まれるシステムを自在に構築できることを確信するに至り、5〜6名からなる開発チームを編成して本格的な開発に取り組むことになります。

ところがその前にいくつかの壁が立ちはだかります。その1つがそれまで蓄積されてきた日程計画のノウハウをいかにスケジューラに取り込むか、ということでした。「勤続何十年という社員がそれぞれのノウハウをもって日程計画を立てていましたが、各自で制約や約束事をもっていました。それをスケジューラに取り込むために、1人1人に時間をかけてヒアリングをして回り、客観化することから始めました。ただ、すべてのノウハウを取り入れると矛盾したりスムーズに連携しなかったりということもあったため、ある程度均一化を図りながらロジックとして取り込んでいきました。一般のパッケージソフトでそれを取り込むのは難しいことだと思うのですが、FLEXSCHEのもつ柔軟性のおかげでほとんどすべてを取り込むことができました。」

そして、最大の難関が「製品倉庫」「キャリア」「岸壁」の3つのスケジュールの連携です。「3つのスケジュールでそれぞれ資源も違い、1つ1つの製品倉庫にすら個別の制約条件がありました。それらをオンライン上で管理し連携させるためにプログラミングしていきました。この際助かったのがFLEXSCHEの機能とデータ構造です。機能が豊富にあったため当社で独自につくり込む手間が少なくて済み、データ構造的にもデータの内部はそのままに、外側を処理するだけで済んだため、本来なら膨大な時間がかかる作業をかなり省くことができました。」

FLEXSCHEのユーザーインターフェースやロジックを拡張するプログラミングもしており、これにより利用者の要求を忠実に満たすことができました。「自分たちでいじれるところはとことんいじったという感じです」

Communicator導入でオンライン化推進も

写真

「従来は計画に変更が生じた際はファックスで送っていましたが、計画が刻々と変わっていく中ではどうしてもズレが目立ってしまう。FLEXSCHE Viewerでは最新の計画がリアルタイムに表示できるので、計画変更にも迅速に対応できると考えました。また、もう1つ忘れてならないのは現場に納得感を与えられることです。これまでは日程計画の指示を出しても、現場が納得しない場合には現場で順番を変えてしまうことが多々ありました。しかし、今後はViewerによって『納期遵守』という客観的な理由を示すことができるため指示された側も素直に受け入れてくれると思います。もちろん日程計画する側にとっても間違いなく指示が出しやすくなるはずです。」

現在、戸畑地区の輸送ラインでは6台のFLEXSCHE Viewerを導入し、オンラインによるリアルタイム化をさらに推し進めており、最終的には作業指示をより自動化に近づけることを目指しています。

「せっかく浦野社長が来られているので注文を申し上げると、今後プラットフォームがどんどん変化していく中で、最新の環境でも常にFLEXSCHEを使い続けられるといいなと思っています。また様々なスケジューリングデータにリアルタイムでアクセスできるFLEXSCHE Communicatorにも期待しています。これまで何かと実現が難しかったダイナミックなスケジューリングシステムの構築が容易になるのではないかと考えています。ぜひ今後とも我々のためになるソフトを開発していってください」

導入企業概要

新日本製鐵株式会社様

本社 東京都千代田区大手町2-6-3
URL

https://www.nipponsteel.com/

設立 昭和45年(1970)年
事業内容 製鉄、エンジニアリング、都市開発、電力、化学、新素材・非鉄素材事業など
売上高 2兆1478億円(単独・平成16年度)
上場 東証1部、大証1部、名証1部、札幌、福岡
従業員数 20,454名<内八幡製鐵所2,859名>(単独・平成17年3月31日現在)
特徴 粗鋼生産で世界3位。

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