ユーザー導入事例

FLEXSCHEを10年以上使い続け
多品種少量生産の先端を行く

大倉工業株式会社様
化学

取材にご協力をいただいた大倉工業合成樹脂事業部と株式会社オークラ工業プロダクツ、
三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社(FLEXSCHEビジネスパートナー)の皆さま

「多品種少量生産への対応」

近年の消費者ニーズの多様化に応えるため、多くの製品で多品種少量化の傾向が強まっています。そのような変化に伴う苦労は、どこの製造現場でも共通の悩みでしょう。長年に渡って培ってきた技術を活かし、幅広い業界で機能的なフィルム製品を供給し続けている『大倉工業株式会社』でも、柔軟な生産への対応力が求められています。いち早く生産を効率化する一策として生産スケジューラを利用していた同社は、2008年よりFLEXSCHEを導入することで、より円滑で、クライアントの要求に確実に応えることができる工場運営を実現しました。

今回は、現在FLEXSCHEを利用して業務を進めている皆さまに、11年前の導入から現在に至るまでの運用について、お話を伺いました。

幅広い業界に対応する大手フィルムメーカー

香川県丸亀市に本社を置く『大倉工業株式会社』は1947年に創業し、合成樹脂フィルムなどで業界の最前線を走る大手化学メーカーです。一口にフィルムと言っても、製品が用いられる業界も用途も実に様々。クライアントからのニーズが多様化し、製品サイクルも短くなる中で、いずれの分野においても機能的な強みを持った製品の数々を世に送り出す大倉工業は、市場から高い評価を得ています。

大倉工業には、建築材料などを製造する「建材事業部」、スマートフォンやテレビに用いられる光学フィルムなどの電子情報分野や医療分野に製品を提供する「新規材料事業部」、そして今回お話を伺う「合成樹脂事業部」の3セクションがあります。合成樹脂事業部は日々の暮らしに欠かせないレジ袋や食品フィルム、農業に特化したアグリマテリアル、産業向けの特殊な機能を付与したフィルムなど、特に幅広い生産を行っており、2008年よりFLEXSCHEを運用しています。

香川県第二の都市である丸亀市に本社と3つの工場があります。

近年はフィルムメーカーとしての環境への取り組みにも力を入れています。フィルムを始めとするプラスチック製品がもたらす環境への課題は世界的な関心事の1つですが、大倉工業ではバイオマス原料を用いた製品作りや生分解フィルムの製造、使用済みフィルムを原料とするリサイクル、あるいは新しい加工形態への取り組みなども行い、フィルム製品の環境への影響を極小化するための施策を展開するなど、社会とクライアントの要望に応え、より機能的な製品を次々に増やしています。

他に先駆けて生産スケジューラを導入

大倉工業が最初に生産スケジューラを導入したのは20年前のこと。生産スケジューラの導入以前は、計画担当者が自ら手を動かして計画を立案していました。 当時は多くの製造現場の例に漏れず、計画立案業務が特定の担当者の知識や技術に依存してノウハウの共有が困難になる『計画業務の属人化』が起こっていました。

また、大倉工業の生産形態は個別受注生産が基本で、製品在庫を持つことはあまりありません。そのため、クライアントから注文の変更があれば、その都度製造現場の計画を変更しなくてはなりません。しかしその都度人の手で計画を緻密に立て直すことは困難であり、どうしても生産能力を正しく見極められないまま追加の注文を受けてしまい、結果として納期遅れなどのトラブルが多発していました。工場と営業の間での激しい応酬も日常茶飯事だったそうです。その状況を脱し、生産状況・計画を『見える化』するための手段として、生産スケジューラの導入が推し進められたのです。

初代スケジューリングシステムにはFLEXSCHEとは異なる生産スケジューラが採用されていました。その導入によって計画の見える化が実現されてクライアントの要求への対応力が高まり、生産現場と営業の情報共有も進んだことでトラブルは確かに減少していきました。しかし、スケジューリングロジックや操作性、安定性といった点で課題を抱えており、生産品目がさらに多様化していく状況の中、計画立案業務の効率化や計画精度の向上を目指してシステムのリプレースが検討されるようになっていきます。

そして2008年、複数の生産スケジューラを慎重に比較検討した末に、FLEXSCHEへのリプレースに踏み切りました。

「新システムでは大倉工業独自の機能を含め、既存システムが備えていた全機能を引き継ぐことが求められていました。FLEXSCHEならば、その全てをカバーできることが確認できました。今後の拡張に耐える柔軟性も魅力でしたし、操作性にも秀でていることから採用を決めました。Microsoft ExcelⓇのような操作が軽快なソフトウェアに慣れている社員たちからも、使いやすいという評価が多かったと聞いています」

丸亀第四工場 生産管理課 氏家氏

FLEXSCHE導入時の各工場からの意見集約・仕様設計に携わった丸亀第四工場、生産管理課の班長である氏家寛氏はそう話します。導入時には、工場の資源情報がある程度揃っていたので、生産スケジューラを利用する素地がない状態からの導入と比べて基礎データの収集においてはアドバンテージがあったと言えますが、それぞれ生産物が異なる複数の工場がある中で、いずれの工場においても使いやすい『大倉工業共通仕様』を決めていかなくてはならないことに大きな苦労があったそうです。

「入社からそれほど間もなかった当時の私はまだまだ工場運営における基礎知識もままならない頃でした。限られた期間で、私よりもはるかに多くの知識と経験を持っている現場の皆さんの意見を聞き、まとめていくことにはプレッシャーを感じていました」

全社共通となるスケジューリングルールや各種機能を実装してから各工場への順次導入を進め、その後個々の事情に合わせた変更を施していくという戦略をとることで、短期間のうちに稼働まで実現させることを目指して仕様設計が進められました。

「まずは、計画担当者の負担を少しでも早く軽減させたいと工場長が熱望していた『株式会社関西オークラ』(グループ会社)の工場から導入をスタートしました。そこでは上手く稼働まで進みましたが、別工場では導入段階になってから新たな要望が出てきて手直しすることになるなど、当初に目標としていた期限に間に合わせることは叶いませんでした」

決して容易ではないプロジェクトではありましたが、関西オークラでの導入開始から数えて8カ月で、遂に予定していた全工場への導入を完了させました。規模や生産物によって導入していない工場もありますが、現在は7工場でFLEXSCHEを運用しています。

差立てチャートはガントチャートをリスト形式で表現し、そこで作業入れ替え等の操作ができる機能であり、本事例のように小ロット多品種生産の工場でも計画の調整をスムーズに行うことができる。

また、小ロットでの受注が多い大倉工業では「工程が細々と表示されるので、ガントチャート上での作業入れ替えが難しい」という声が上がりました。それが気付きとなって新たにFLEXSCHEの標準機能として開発されたのが『差立てチャート』です。これは各資源上での作業順序を調整するためのリスト形式のチャートで、作業を表す行をマウスでドラッグすることで作業の順序や利用資源の変更を簡単に行える機能です。この機能は「作業の並び替えや 計画変更等がしやすい」と好評を得て、現在に至るまで大倉工業で愛用される機能となっています。

FLEXSCHEがもたらした円滑な工場運営

導入から11年、計画担当者たちは「これがない状況は考えられない」と口々に語り、大倉工業にとってFLEXSCHEは欠かせないシステムとなりました。

「FLEXSCHEによって工場運営の流れがはっきりとわかるようになりました。円滑な生産計画のために障害となるものが見えてきます。例えば設備の状況、オーダーに対する生産能力の不足、人手不足などが浮き彫りになるのです」

合成樹脂事業部生産管理グループ 荻田氏

そう話すのは合成樹脂事業部生産管理グループの課長を務めている荻田裕紀氏。工場運営の妨げとなる様々な問題の把握は一筋縄にはいきませんが、それらが明確に可視化されるというのは生産スケジューラの大きな効用のひとつです。

「FLEXSCHEがもたらす情報が、トラブルの原因究明、その解決方法、目前の納品への対応など、様々な議論のために用いられるようになりました」

FLEXSCHEのスケジューリング結果は基幹システムにも随時反映され、それを営業部もチェックすることによってクライアントへの納期回答・調整にも活用されています。

合成事業部の生産では、「原反生産」とラミネートやスリットなどの「二次加工」という大きく分けて2種類の工程があります。特にFLEXSCHEがもたらす恩恵が大きかったのが原反生産でした。それまで漠然としていた製造現場の計画が具体的な作業指図にまで落とし込まれたスケジューリング結果というかたちではっきりと視覚化され、進捗管理も簡単になりました。現場も計画を容易に把握できるので、整備スケジュールの設定や原料や資材の仕入れもより円滑になり、在庫の削減にも繋がっています。ある工場では1日あたり5時間を費やしていた計画立案業務が50%も効率化し、以前のシステムと比べて計画精度も大きく向上しました。一方、二次加工では、ひとつずつ柔軟にリスケジュールするには工程があまりにも細かすぎるため、FLEXSCHEによるラフスケジューリングと計画担当者たちの判断を組み合わせて生産計画の決定や調整を行うというように、生産スタイルに応じた柔軟な使い方をしています。

また、工場・工程ごとに立案担当者がおり、複数の社員がFLEXSCHEを操作しています。10年という長期間に渡って使用しているので、その間には計画担当者の変更もありました。しかしFLEXSCHEを導入したことによって、計画立案業務の属人化が抑止され、業務の引き継ぎが容易になりました。ある工場のある工程では、複数の従業員がFLEXSCHEを操作できるようにすることで、特定の計画立案担当者に大きな負担をかけなくてもすむようになったなど、副次的な効果の大きさも実感しているそうです。

本社の製品の展示場には製品の数々が並んでいる。クライアントの要望に応え、機能的で多種多様なものづくりを実現しているのだ。

多様なニーズに対応するためのFLEXSCHEの役割

大倉工業は、Windows7、Windows10への切り替えをきっかけにFLEXSCHEもアップデート。それぞれ、Ver8からVer10、そしてVer17と大幅な更新をしていますが、システムは一層洗練されながらも違和感を覚えるような使用感の変化はなく、バージョン間での互換性の問題やトラブルもなく安定した運用を続けています。そして、新たな生産に対応するべく長年の利用経験を活かして新たな機能も追加し、FLEXSCHEはさらになくてはならないシステムへと成長しています。

合成事業部業務グループ 田中氏

「多品種少量化の傾向は年ごとに強まっているように感じます。商品のサイクルも短くなってきたために、最近では多くが個別受注生産という状況です。例えば、納品後にお客様の工場でラベルシールを貼っていたものも多くが弊社での印刷に切り替わるなど、今後もロットサイズはより小さくなり、納期も縮まっていくことが見込まれます」と、合成事業部業務グループの次長を務める田中賢二氏は今後の展望について話します。

10年以上の間、変化し続けてきたニーズへの対応に欠かせないものとして、FLEXSCHEは信頼を得てきました。そして、これからも複雑化するであろう生産に備えるためにもその重要性は高まり続けていくことでしょう。大倉工業の高い技術を活かした先進的で機能的なものづくりを、いつまでも、FLEXSCHEが支えていきます。

インテグレーターの声

三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社(FLEXSCHEビジネスパートナー)

スケジューラのリプレイスの目的を達成するためには、要求された機能を実現できる可能性が高いFLEXSCHEが最適と考えて大倉工業様にご提案をさせていただきました。導入時には、それぞれスケジューリングルール要件が異なる複数の工場でのFLEXSCHE稼働を、スピーディかつコストを抑えて実現するために、まず各工場で共通となるベースの標準仕様を設計するところからプロジェクトをスタートさせ、工場ごとの要件に合わせてその仕様をカスタマイズするという手法で進めました。

稼働以来、大倉工業様には長くFLEXSCHEをご愛用いただいています。2018年にはWindows10対応に伴ってFLEXSCHEの大幅なバージョンアップを行いました。その際に大倉工業様の改善要望にお応えして、差立てチャートを帳票出力する機能の追加など、より便利に使っていただけるように対応しました。

開発にあたってはFLEXSCHEの能力を最大限に発揮できるよう、細かな点にまでアドインを駆使し、操作性を重視したシステム設計を行っています。今後も、生産現場の変化とともに変わっていくお客様のご要望に、いつも柔軟に対応できるよう力を尽くしたいと思っています。

導入企業概要

大倉工業株式会社

本社所在地 香川県丸亀市中津町1515番地
設立 1947年
資本金 8,619,616,017円
従業員数 単独 1,164名、連結 2,053名(2018年12月31日現在)
事業概要 各種ポリエチレン製品及びポリプロピレン製品の製造販売、光学機能性フィルム等の製造販売、パーティクルボード及び加工ボード等、加工合板の製造販売 等
URL https://www.okr-ind.co.jp/

FLEXSCHE
ユーザー導入事例

PAGETOP