生産管理システムとシームレスな連携を実現、
設備稼働率大幅アップにより1.5倍の生産数増もクリア
東洋合成工業株式会社様 化学
- 2005年9月 作成
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デジタル家電に重要な基幹部品である半導体や液晶の製造で使用されるフォトレジスト用感光材。デジタル家電の需要増によって、その生産量は毎年のように増えています。東洋合成工業でも、増え続ける製造需要への対応を迫られ、稼働率アップが急務でした。
そして、もう1つ大きな課題が実績収集でした。トラブルが発生するたびに管理者は現場へ足を運ばなければならず、実績収集によるリアルタイムな進捗状況の把握が欠かせなかったのです。なぜ実績収集にFLEXSCHEというスケジューラを選ぶことになったのでしょうか。東洋合成工業の佐藤義昭氏と、システムプロバイダ・三菱マテリアルの石飛益弘氏にお伺いしました。
増え続ける需要増に管理者は管理の限界に
三菱マテリアル株式会社
戦略事業開発室
ソリューションビジネスグループ
産業システムビジネスユニット
石飛 益弘 氏
東洋合成工業株式会社の設立は1954年と、すでに半世紀以上もの歴史があります。事業内容は、半導体や液晶の製造で使用されるフォトレジスト用感光材を生産する感光材事業、高度な合成・分離精製技術で香料材料等を生産する化成品事業、多種多様な石油化学品の受入・貯蔵・輸送を請け負うロジスティック事業の3つから成ります。
今回FLEXSCHEを導入したのは千葉工場にある感光材事業本部です。この千葉工場は千葉県香取郡東庄町に立地し敷地面積は東京ドームの1.2倍の大きさです。社員数は約150名で、その他に関連会社から常時作業員30名が従事しています。この工場では主にフォトレジスト用感光材を製造しています。
フォトレジスト用感光材とは、光や放射線によって固まったり溶けたりする感光性樹脂で、IC(集積回路)やLSI(大規模集積回路)などの半導体の製造工程で使用され、情報通信や電子関連産業では欠かすことのできない製品です。
千葉工場での従来の生産管理は文書による作業指示書など、手作業を中心におこなっていました。そのため、計画立案に大きく時間をとられていました。「計画立案の時間もそうですが、それ以上に大きな負担となっていたのが管理です。作業場所が配管によって各階に分散しているため、進捗を把握するために工場内放送で担当者を呼び出したり、直接現場まで確認しにいくこともありました。そのため、不具合が発生したときに対応が遅れてしまうこともしばしばでした」
こうした状況に拍車をかけたのが、製品需要の増加です。デジタル家電の需要増にともなって製造量も大幅に増え、以前と比べると実に1.5倍も増加しました。一時的に生産数を上げるものの、その分管理の時間も増えてしまい、思うように生産数が上がらないという悪循環に陥っていました。現場管理に時間をとられ、なおかつ1.5倍もの製造量アップに対応しなければならない。管理者にとって、まさに管理の限界を超えていたのです。
「現場管理の時間を減らすには、現場に足を運ばなくても進捗状況が把握できるようにするしかありません。そこで考えられたのが、進捗状況を実績収集することです。実績収集して作業の進捗がリアルタイムに把握できれば、確認のために現場にいく必要もなく、トラブルも早期に発見できるようになる。そうすれば、自ずと設備稼働率も向上するはずです。また、効率的な計画立案が可能になれば、稼働率をさらに向上させることができる。そこで、生産スケジューラを含む生産管理システムの構築を図ることになったのです」
システムとの連携のしやすさからFLEXSCHEに
2004年春、こうして生産管理システムの構築がスタートしますが、問題として大きく立ちはだかったものがあります。実績収集の方法です。実績収集の方法を1つ間違えると、逆に現場の作業員に大きな負荷がかかることがわかったのです。
「管理者の負担を軽減する目的におこなうことが現場作業者の負担になっては本末転倒です。当初はパソコンやPDAから数値を入力することを考えました。しかし、工場は火の元や静電気が厳禁の防爆エリアなため、パソコンなどで入力するには一旦防爆エリアから出る必要があり、再入場の際もクリーンルームを通らなければなりません。その負担を考えると、とても現実的とはいえませんでした」
そこで検討されたのが、ICタグを使った実績収集でした。これは、ICタグと作業指示書を1組にして「電子カンバン」とし、それを生産現場に回すことで、自動的に実績収集ができるというものです。そして、そのソリューションとして採用されたのが、三菱マテリアルが提供する生産管理システム「M2SdataTube」で、これをベースとして、防爆対応の管理盤や情報収集ハードウェアを開発するなどして独自のシステムTgames(Toyo Gosei Advanced Manufacturing Excusion System)を構築しました。
「スケジューラの実績収集をどのように行うのか。そのソリューションがICタグを利用して自動的に実績収集を行うM2SdataTubeです。そして、これを実現するために必要不可欠なのがスケジューラとのシームレスな連携です。一般のパッケージソフトは、パッケージソフトとして完結してしまっており、他のシステムに組み込むためには非常な困難を要します。かといって、ゼロからつくり込んでいたのでは莫大な費用がかかってしまう。パッケージソフトでありながら、生産管理システムと連携できるスケジューラである必要がありました」
インターネットや展示会などで情報収集をし、複数の候補の中に挙がったのがFLEXSCHEでした。スケジューラとしての操作性が高く、作業員に負担をかける心配が少ないこと。また、柔軟性が高いので機能追加などにも素早く対応できることが主な選定理由ですが、決め手となったのが、生産管理システムとの連携のしやすさです。
「今回のシステムは、実績収集の情報を関係者全員が把握できることを目指していました。そのためには、生産計画を作成するパソコンと、関係者に予実をリアルタイムで表示させるパソコンを同期させる必要がありました。FLEXSCHEはパッケージ製品であるにもかかわらず、VisualBasicやVisualC++といったプログラム開発言語を使っているため、機能を追加したり、他システムと連携させることが容易にできます。我々が望んでいたものを実現できるスケジューラを考えたときに、最後まで残ったのがFLEXSCHEだったのです」こうして、FLEXSCHEが導入されることになります。
設備稼働率が大幅に向上し、利益額アップをもたらす
東洋合成工業株式会社
感光材事業本部 工場管理グループ長
佐藤 義昭 氏
インテグレーター、システムプロバイダ、東洋合成工業の3者で導入が図られますが、導入から稼動までわずか3か月で済みました。東洋合成工業の現場担当者たちの迅速なマスターデータの整備、システムプロバイダである三菱マテリアルのICタグによる実績ソリューションへの対応がスムーズだったことが主な原因ですが、もう1つ大きな力となったのがFLEXSCHEのスケジューラがもつ特性です。
「FLEXSCHEを導入するに当たって、いくつか機能追加やカスタマイズしたところがありました。たとえば、不定期に作成する生産計画を、表示用のパソコンに反映させる仕組みや、時間経過とともに変化する計画と実績をリアルタイムで表示する機能などです。一般的なパッケージソフトですと導入することが難しいと思いますが、FLEXSCHEは非常に高い柔軟性があるので、困難と思われる機能も容易に取り入れることができる。導入から稼動まで3か月で済んだのは、こうしたFLEXSCHEの扱いやすさも見逃せないと思います」
導入前に運用や使用方法について教育を受けていたものの、導入直後は戸惑うこともあり、インテグレーターへの問い合わせも数多くありました。しかし、迅速かつ丁寧な対応により問題もすぐに解決し、導入1か月後には質問らしい質問も出なくなりました。FLEXSCHEを組み込んだ生産管理システムが稼動して1年近くが経過していますが、すでに狙い通りの成果を上げています。
「まず大きいのが、実績収集ができるようになったため、進捗状況がリアルタイムで把握できるようになったことです。計画に対して遅れがあれば、それを随時作業員にフィードバックすることで、不具合に対して迅速に対応できるようになったため、以前にように進捗の確認のために現場に足を運んだり、担当者を工場内放送で呼び出す必要もなくなりました。そのため、管理負荷が大幅に減り、生産数を上げても混乱することがなくなり、当初の目的だった設備稼働率が大幅にアップしました。今では30バッチから50バッチの増産を安定的におこなえます」
そして、もう1つ強調する効果が現場作業員への負担がまったく発生していないことです。ICタグの電子カンバンを所定の場所に移動するだけで自動収集が可能なため、作業員の手をまったく煩わせることがありません。
「ICタグはトラブルの早期“発見”につながっていますが、トラブルの早期“解決”に役立っているのがLEXSCHEです。トラブルが発生して計画に遅延が発生しても、リスケジューリングすることで瞬時にスケジュールを組み直せるため、トラブルが発生しても、大きな遅れが発生することはなくなりました」
設備稼働率の向上は、利益を大きく押し上げる結果となりました。2004年度、感光材事業は17%増の79億4,200万円、会社全体でも15%増の117億6,000万となり、経常利益に至っては対前年比94%増の15億4,500万円と、過去最高を記録したのです。
「現在、DCS(分散型制御システム)とのデータ連携や立体倉庫のマテハン効率化、既設・新設の原料工場や中間製品工場に順次システムを横展開するプロジェクトがスタートし、主要工場の『可視化』と、原料から製品材料までをコントロールするサプライチェーン管理(SCM)の実現を目指しています。生産管理システムとシームレスな連携ができるのはFLEXSCHEならではのものです。SCM実現のために、FLEXSCHEの活用の場は今後さらに広がっていくと思います」
インテグレーターの声
本システムにおける東洋合成工業様の要望の中で、作業員に負荷をかけない実績収集方法と、やはり作業員に負荷をかけない操作性の良いスケジューラの選定が最も重要でした。
カスタマイズすべきところはもちろんありましたが、FLEXSCHEが持つ操作性の良さと他システムとの連携の容易さが今回の要件に最適だと判断しました。
また、本案件では導入から稼動まで3ヶ月と短期間で実現できました。とくに、東洋合成工業様の現場担当者の方々による短期間でのマスターデータ整備、三菱マテリアルのICタグによる実績収集ソリューション、これらとともにFLEXSCHEの高い柔軟性による開発期間の短縮が、全体のシステムを短納期で導入するために効果的であったと感じています。
現在、DCSとのデータ連携、立体倉庫のマテハン効率化、既設・新設の原料工場や中間製品工場への横展開などのプロジェクトがスタートしています。お客様からの様々な要望に対して私どもも柔軟に対応していきたいと思っています。
導入企業概要
東洋合成工業株式会社様
本社 | 千葉県市川市上妙典1603 |
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千葉工場 | 千葉県香取郡東庄町宮野台1-51 |
URL | http://www.toyogosei.co.jp/ |
設立 | 1954年(昭和29年) |
事業内容 |
半導体や液晶パネルに使用される感光性材料の製造。 医薬品、塗料、香料などの中間体となる化成品の製造。 多種多様な石油化学品の受入・貯蔵・輸送。 |
売上高 | 117億6千万円(平成17年3月期) |
上場 | ジャスダック |
従業員数 | 313名 |
システムプロバイダ情報
三菱マテリアル株式会社
本社 | 東京都千代田区大手町1-5-1 |
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URL | http://www.mmc.co.jp/ |
設立 | 1950年(昭和25年) |
事業内容 | 非鉄金属・セメントなどの基礎素材から、金属加工・アルミ缶製造、半導体関連・電子製品、エネルギー・環境ビジネスなど |
売上高 | 連結9,847億円、単体5,312億円(平成17年3月期) |
上場 | 東証一部 |
従業員数 | 連結18,477人、単体4,904人 |