取材日:2018年3月
パートナー座談会 エンジニア編 後編Engineers’ talk
日本とは事情の異なる海外導入
皆さん、いろいろな導入実績がありますが、このなかで海外の案件を担当された方がいらっしゃれば、ぜひお話をお伺いしたいです。
- MSI 大場
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私、ありますよ。アメリカとタイと台湾です。やはりどの工場も日系企業でした。一度、中国の大連ではセミナーも開催しました。
- KSI 小倉
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私も5年前にタイで導入したことがあります。それと現時点ではまだ進行中ですが、中国にも行ってきました。
導入作業にあたっての期間、現地と日本を行ったり来たりという状態になるのですか?
- KSI 小倉
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タイに二週間滞在して設定をこなしていって、という感じでした。中国にはつい先日一週間行ってきたのですが、また今度行くことになりますね。
- MSI 大場
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私もアメリカの時はプレゼンでトータル三日間の弾丸日程で行って、納入が決まってからは一週間程度の滞在が二度ほどありました。
海外での導入における特殊な要素など、障害になることはありますか?
- MSI 大場
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やはり言葉の問題は大きいですね。通訳がついてくれますし、専門的な言葉はむしろ共通で普通に通じますが、現地の方が使いこなせるように教えるのが難しいです。FLEXSCHEは外国語版もありますが説明には苦労しましたね。
- KSI 小倉
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言葉は苦労しますよね。中国でのことなのですがお客様のパソコンを操作することがあったんです。それが中国語OSなもので、設定を見ようと思っても中国語なので理解できないという状態で大変でした。また中国ではインターネットの規制が厳しいので、必要なツールをお客さんのパソコンにインストールすることが許可されずに困りました。
海外では、導入にあたって日本とは異なる特徴的な部分ってなにかあります?
- MSI 大場
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アメリカは工場のラインが独特でしたね。工場の土地も広大なので、一気通貫の非常にシンプルなラインが作れるんですよ。向こうでは「スーパーライン」と呼んでいました。
あまり生産計画の立案が難しくなさそうなイメージですが、FLEXSCHEは効果を発揮できたのですか?
- MSI 大場
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スーパーライン化してしまうとたしかに計画立案自体はそんなに苦労しませんし、日本の工場のようにうまく資源を使って計画を組もう、ともなりませんよね。そういうところもあって、残念ながらその工場では上手く活用してもらえませんでした。
FLEXSCHEに携わる新たなエンジニアを育てる
海外案件に限らず、皆さんがFLEXSCHE案件で苦労することを教えてください。
- JCS 松尾
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苦労というと、FLEXSCHEに携わるエンジニアを育てるのが悩みの種ですね。
なるほど、皆さんはそれぞれエンジニアのリーダー的立場にいらっしゃる方々ですが、当然部下の指導などもされますよね。後進の育成などはいかがですか?
- UIS 日坂
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私はずっと後進がいない状態だったんですけど、最近新しいFLEXSCHE担当のエンジニアが入ってきたので、教育を始めたところです。
- YJP 深見
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正直言って難しいのができるようになる人は大した指導をしなくても勝手にできるようになるし、FLEXSCHEになじめないエンジニアはいつまでもなかなかできないですよね。切った貼ったで組み上がるのではなく、ロジックで成り立つシステムですから。
- MSI 大場
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うちもなかなか苦労していますね。私の部署では新人教育の一環で全員がFLEXSCHEの使い方を勉強していて、フレクシェさんが行うトレーニングコースにも参加させています。そこでカンが良いな、と感じるようなエンジニアはすぐにスクリプトでアドインを作れるくらいになるのですが、うちのような地方の中小企業ですとそういった人材の確保はいつも難儀しますね。今後はもう一人か二人、FLEXSCHEについていろいろと任せることができるスタッフを作りたいのですが。
- KSI 小倉
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弊社でもFLEXSCHE担当の候補はいるのですが、なかなか実際の案件に関われず育てられていません。だから現状、私が全ての案件でお客様先に伺わざるを得ない状況です。
- JCS 松尾
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実装の部分はほとんど任せられるスタッフは育ってきているのですが、プリセールスから受注、要件定義といった上流の工程を任せられる人を養成するのが難しいですね。
- MSI 大場
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製造業の事情もよくわかっていないといけないですし、そこが一番難しいところですよね。製造業に知見がある人だと飲み込みが早くて良いのですが、システム面の知識だけではどうにも上手くいかないですよ。
- UIS 日坂
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普通のシステム設計とはかなり違いますからね。
- JCS 松尾
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私も部下がヒアリングに行く時は同席して、口を挟みたくなるところを我慢して黙々と議事録を書いています。お客様の話を理解できるようになってきてはいますが、話の引き出し方はまだまだですね。これからさらに場数を踏んでいけば、ヒアリングの質は上がっていくでしょうけどね。
- KSI 小倉
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私自身、なかなかわかりやすく教えられる自信もないですね。これまで10年FLEXSCHEを扱ってきて、一つとして同じように作ったものはないので「前やったこれを参考にして」という風にできないと思っています。業界を絞るとまた違うんですかね?
- YJP 深見
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そうでもないですよ。弊社では化学メーカーのお客様が多いですが、やはり会社によって全然違いますからね。結局のところ実際の案件をこなしていくなかで覚えていくしかないですよね。成長のスピードも人によって全く違いますけど。
- KSI 小倉
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ERPの場合はそれに沿って進めていけば間違いない、という導入マニュアルが各ERPごとにあるんですよ。だけど、それに当てはめれば万事解決、みたいなものをFLEXSCHEで作ることはできないと感じています。
- YJP 深見
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社内でもテンプレートを作ろうと言われていますけど、なかなか難しいですね。
- MSI 大場
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下を育てるためにもそれぞれなにか考えなくてはいけないですよね。
システム導入を成功に導くために
皆さんの経験からFLEXSCHEの導入を成功に導くために注意している、あるいは課題と考えているポイントはありますか?
- YJP 深見
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システムに関わる人全員が自分の担当する部分だけではなく全体のことを考えられないといけない、と私は思っています。我々もスケジューラのことだけ考えていれば良いわけではないんですよ。自分のところだけを考えると必ず失敗しますね。FLEXSCHEと連携する生産管理システムやMESと合わせて、全体としてどういった形になるのが理想か、考えなくてはいけません。それがないシステムというのははっきり言って失敗します。
- UIS 日坂
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あとはお客様の生産スケジューラに対する理解の度合いも鍵になってきますよね。ボタン一つ押せばなんだか自動で生産計画を立ててくれる夢のツールではないんですよ。実際のところそれが難しいという認識はあるとは思うのですが、工場が抱える課題が具体的にどんなもので、FLEXSCHEをどう使って解決できるのか、具体化しないとなかなか良い結果は得られないですよね。
- KSI 小倉
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その課題ということ自体が整理できていないことが多いですし、問題の本質がどこにあるのか、きちんと打ち合わせを重ねて明らかにしていきたいですね。結局、要件通りに作って検収をもらえたとしても、お客様が想像していたものと違ってご満足いただけないというのは残念ですからね。
- JCS 松尾
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どんなにきちんと作っても、結局使っていただけないという結末になるとその案件は失敗になりますからね。私も今までにいくつかあります。
- KSI 小倉
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FLEXSCHEと並行して生産管理システムの導入も走っている案件はやっかいですよね。
- MSI 大場
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私が担当してきた案件では、たいていの場合はFLEXSCHEの方が先に進められるんですけれども、連携しなくてはならない情報があるので、その仕様が決まらないとなんとも前に進まない、という場合がありましたね。しばらく期間が空いてしまってようやく総合テストの段階で連携してもそこで不具合が出たりとか。稼働まで時間がかかってしまう典型例だと思います。
- KSI 小倉
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あとERP導入が本丸として位置付けられて、生産スケジューラの方がおまけのように考えられてしまうことがあるんですよね。「隣で物置でも作っといて!」みたいな扱いですよ。。
- YJP 深見
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作っといて、ならまだマシですよ。以前に、ERP稼働後にFLEXSCHE導入スタートということで決まっていた案件が、「予算がなくなったのでFLEXSCHEいりません」と言われてしまったことがありました。
- KSI 小倉
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ERP導入が上手くいかないからいつまで経っても注文が来ないということもざらですよ。
- MSI 大場
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ええ、それは厳しいですねぇ……。
- KSI 小倉
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工場では「在庫削減」とか「スループットの向上」とか、そういったことを目的にシステムの刷新を図るわけじゃないですか。でもその効果を出すのはERPではなく生産スケジューラのはずなんですよね。なのにERPに必死になって、本来の目的が失われてしまいまっているように感じます。
- MSI 大場
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FLEXSCHEの提案をしていてつらいのが、それまで手書きの生産計画でもなんとか業務が回っているものだから『なくてもなんとかなる』という扱いにされてしまうんですよね。
- JCS 松尾
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そういう風に考えられるのはもったいないですし、残念なところです。
- KSI 小倉
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あと個人的にあるのが、変に難しいものを作りすぎてしまうパターンです。自業自得なところもあるんですけど。あとは要件通りに一生懸命制約条件を実装するんですが、それがお客さんが求めているものと違うというのがテスト段階でようやく明らかになって、いろいろとやりなおし、と。
- JCS 松尾
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お客様にはできるだけ早い段階でFLEXSCHEに触っていただいて、確認してもらった方がいいですよね。
- YJP 深見
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たまにそれを「完成していないんだから触らない」と言われてしまうこともあるんですけど、そういったことにならないためにもご協力いただきたいですよね。我々側の体制の話なんですけど、皆さんは一人でやられる業務がかなり多いじゃないですか。もしも自分が急に業務を担当できないようなことになった場合、誰かに引き継げる状態になっています?
- KSI 小倉
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ああ、難しいですよね。現場にも一緒に行っていないと簡単には引き継げないです。
- YJP 深見
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そうですよね。なかなか難しいですよね。例えば私たちでもこの場にいる誰かの案件を引き継げと言われたとしたら……。
- JCS 松尾
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かなり大変ですよね。一度進行をリセットしてしまった方が早そうです。
- YJP 深見
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FLEXSCHEを導入しようというお客様には計画立案作業の属人性を排除したい、という狙いがあるじゃないですか。でも皮肉なことに開発する側はどうしても属人性から逃れられないですよね。ただ、最近FLEXSCHE上の計算式にコメントが入れられるようになったこともあって、他のエンジニアが理解しやすくなりました。
- UIS 日坂
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たしかに、それを書いた本人しか意味がわからないようなC++で書かれてしまうと社内でも困ります。計算式だと引き継ぎも比較的楽ですよね。
- KSI 小倉
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エンジニアの技術だよりだけではなく、AI技術を取り入れられることができたらいいですよね。一度お客様に言われたことがあるんですよ、「今時だとAIが何通りもスケジューリングして、そのなかで最適な結果を選んでくれたりしないの?」と。あるわけないじゃないですかと言ったんですけど、いつかそんな時代が来るのかなとも想像しています。
- UIS 日坂
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現在のAIはディープラーニングで人間が教えたことを模倣するわけじゃないですか。そうするとスケジューリングルールも人間がやったことを模倣することになるので、もともとの計画担当者がやっている生産計画以上のものはできないですし、しかもその計画担当者さんが退職したりしたら教えるデータもなくなってしまう。今の技術ではそこが問題になるのかなと。
- MSI 大場
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そもそもオリジナルなルールが本当に妥当なのか、というところですよね。その工場独自のルールだけでなく幅広く情報を与えていくことができればもしかしたらより良い結果が出せるようになるかもしれません。少なくとも未来はあるでしょうね。
FLEXSCHEエンジニアが生み出す価値
最後になるのですが皆さんがFLEXSCHEに携わっているなかで喜びを感じるのはどんな時ですか?
- JCS 松尾
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案件を受注できた時はやはりうれしいですよね。お客様から求められていると実感します。同時にそこからが苦難の始まりでもあるのですが。
- UIS 日坂
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なかなか案件が終結しない時はやはり苦しいですけど、本稼働に入った後に現場の方々に便利になったよと声をかけてもらえるとやはりうれしいですよね。開発途中でも、お客様から伺った要望にあったものをバシッと完成させられた時は達成感もあります。
- MSI 大場
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ある宮城のお客様なのですが、2011年の震災の被害が大きくて工場も大きなダメージを負ってラインが止まり、メインの枠組みとなるシステムも止まってしまっていたんです。そこからいざ復活しようという時にFLEXSCHEだけは動いていたそうなんです。「FLEXSCHE使ってラインを動かしたんだよ」と伺った時はうれしかったですね。改めて、ものづくりに貢献できているんだなと感じると同時に、もっといろいろなところで使ってほしいなと思った瞬間でした。
- YJP 深見
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私にとってはどの案件も思い出深いですが、その中でも特にある導入で非常に苦労したことは印象に残っています。大変な仕事でしたが先方のご担当者様がすごく面倒見の良い方で、協力して完成までこぎ着けた時は本当にうれしかったですね。
長時間にわたり、ありがとうございました。今回、初めての試みとなったパートナー同士での座談会、いかがでしたか?
- UIS 日坂
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それぞれ皆さん、苦労されているんだなとわかりましたね。最近の働き方って、そんなに泥臭く、仕事に向き合うのを避ける雰囲気があるじゃないですか。もっと泥臭くてもいいじゃないかと、皆さんとお話をして感じましたね。
- KSI 小倉
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私は何より、最近は仕事で壁にぶち当たってばかりでしたからこうやって苦労や悩みを聞いていただけたのがうれしかったです。
- JCS 松尾
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皆さん、弊社よりも大きな会社ばかりですから、今回お話してJCSが目指すべき仕事のスタイルを見せてもらったと思います。そして今後はさらにパートナー同士、一緒に仕事をしたり助け合ったりできると良いなと感じました。
- MSI 大場
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各地で頑張っている仲間がいるということが改めてわかり、今後の励みになりました。パートナー間の協力体制がもっとしっかりとしたものにできれば、と感じます。今回のような座談会はこれからも定期的に行えると良いですね。
- YJP 深見
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今回は他のパートナーさんのやり方を学べて良い経験になりました。今度はエンジニアをもっと集めてコッテコテの濃い技術やスケジューリングルールの話ができるような集まりができたらうれしいですね。